なんと気付けば2年以上もすっかりほったらかしになっていたこのコーナー、大変失礼しています。
「次回からは「楽器の音造りについて」みたいな感じで進めてみようと思う」とか言っておきながら、最近たまたま「ミックスダウンって何ですか?」って複数の人に聞かれたので、2年前の予告など全く無視して、そして非常に今更ではあるけど、今回は簡単にミックスダウンとマスタリングという二つの作業について説明しよう。



現在トライユニティのレコーディングの状況やメンバーの感想などを都度Podcastingのビデオキャストとして放送配信しているわけだが、実は楽曲の完成に至るまでには、レコーディング後にこの二つの大きな作業を行わなければならず、しかしながらこの部分についてはこのコーナーでピックアップされなければ他ではまず触れられる事も無いだろう(悲)。

余談はさておき、ミックスダウンとは一言で言うと、歌やギター、ベースやドラム等のマルチトラックレコーダ(MTR)に録音した複数の音を、CD等の家庭用音響機器で聴ける様に2ch(チャンネル)=ステレオにまとめるための編集作業の事を言う。
とは言ってもただ単に音をまとめるというわけではなく、各パートの音の配置バランスや音色、曲全体の雰囲気をつくる調整作業もこのミックスダウンと言う作業になる。

このミックスダウンがいかに大事かを、ベーシストのj23が今はまっているバスケに例えて説明すると、どんなに優秀なプレイヤーが5人集まったとしても、それぞれがバラバラにプレイしているようでは絶対に試合に勝つ事は出来ない。良い試合をしてそして勝つためには、各メンバーの個性を磨き上げながらもチームワークをしっかり養い、全体(チーム)としてどうあるべきかを追求する事が大事なのである。
つまりは曲に関しても同じで、どんなに素晴らしいプレイヤーを集めてそれらの演奏した音をレコーディングできたとしても、ミックスダウンがヘボければ、それは楽曲として全く興味をそそられない駄目作品となってしまうのである。
従って音響エンジニアとしては、これまでにこのコーナーで説明してきたような機材や技を駆使して、なんとか理想の姿、あるべき状態に作品(曲)を近づけていこうとする地味で涙ぐましい努力が必要なのである。

さて、(話がどんどん横道にそれて行きそうになるのをここでしっかりと防ぐために)もう一つの作業マスタリングについて説明しよう。
マスタリングとは最終的なCD音源、つまりアルバム化するために必要な作業であり、ミックスダウンが終わった各曲間の音量や音質等を揃えて、最終的にアルバムとして聴いた時に違和感の無い状態にするための作業である。
このマスタリングは厳密に言うと、アルバム化するための曲順や曲間の調整、そして全体の粒を揃えて最終的にマスターテープ(CD)を作成するまでの「本-マスタリング」と、各曲毎に目標の音圧に近づける為の圧縮作業、音質調整作業となる「プレ-マスタリング」にわけられる。
いずれの作業においてもEQ(イコライザ)やコンプレッサ等の音を編集するための機器が必要になるわけだが、最近ではこれらの全作業がほとんどディジタル化されているためPC上での調整加工作業となっている。

また最近のJ-POPでは、プレ-マスタリングの音圧調整の段階で、第一印象重視の為にどこまで音圧を引き上げる事ができるかという、いわゆる「音圧競争」状態になっているが、海外の一部の尊敬すべきエンジニアに言わせると、「音圧をあげる為にダイナミックレンジを犠牲にしているだけの間抜けな戦いだ!」の一言で切られてしまう(爆)。
つまり、ミックスダウンと同様にこのマスタリング作業も、楽曲の作品レベルを左右する非常に重要な作業なのである。

そしてトライユニティにおいては、これらの作業は全て俺独りの手に委ねられており、そういうわけでアルバム製作の過程においては、ほとんど屋内に引篭もりという状態が続くわけである(涙)。

以上、今回は割とあっさりとした内容ではあったが、2年もほったらかしにならないようにする事を今後は気を付けます!


- 第5回 END (2008.08.18) -


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